安全な写真ワークで感情の記憶と現在地を探る:視覚的手がかりを活用した自己理解
写真には、写し出された瞬間だけでなく、その時の感情や記憶、そして現在の自分に呼び起こされる感覚が込められています。私たちは無意識のうちに写真を見て特定の感情を抱いたり、過去の出来事を思い出したりしています。この「わたし解放ジャーナル」の記事では、写真という視覚的な手がかりを安全な方法で活用し、自身の感情の記憶や現在地を探求するための具体的なワークをご紹介します。
写真ワークが感情探求に有効な理由
言葉だけでは捉えきれない感情の機微や、過去の出来事と強く結びついた感情にアクセスする際に、視覚的な情報である写真は非常に有効なツールとなり得ます。
写真は単なる視覚情報ではなく、特定の瞬間の空気感、状況、関わった人々など、多くの情報を含んでいます。これらがトリガーとなり、当時の感情が呼び起こされることがあります。また、現在の自分がその写真を見てどのように感じるかを探ることは、現在の自分の状態や、過去の経験が現在にどう影響しているかを理解する手助けになります。
このワークは、直接的に過去の辛い出来事と向き合うのではなく、あくまで「写真」という媒介を通して感情に触れるため、比較的安全に取り組むことができます。視覚情報は言葉よりも直感的で、理性的なフィルターを通さずに感情にアクセスしやすいという側面もあります。
ワークを始める前の準備
このワークに取り組む前に、以下のものを準備してください。
- 写真: 1枚から数枚。過去の写真、最近の写真、自分で撮った写真、誰かにもらった写真など、種類は問いません。ただし、現時点で見て極端に辛い感情が強く引き起こされる可能性のある写真は、無理に選ばないようにしてください。まずは、比較的穏やかな感情や、少し気になる程度の感情が湧きそうな写真から始めることをお勧めします。
- ジャーナル(ノート)と筆記具: 写真を見て感じたこと、気づいたことを記録するために使用します。
- 安全で落ち着ける空間: 誰にも邪魔されず、安心してワークに取り組める場所を選びましょう。
- 水分: 必要に応じて。
- ティッシュ: 感情が動いた時に備えて。
安全な写真ワークの手順
以下の手順でワークを進めてみましょう。ご自身のペースで、無理なく行うことが重要です。
- 写真を選ぶ:
- 準備した写真の中から、今、なんとなく惹かれる、あるいは少し気になる1枚を選びます。
- 複数枚ある場合は、無理なく一度に向き合えそうな枚数(例えば3枚まで)に絞りましょう。
- どうしても選べない場合や、特定の感情(例えば「喜び」や「少しの寂しさ」など)を探求したい場合は、そのテーマに沿った写真を探してみるのも良いでしょう。
- 写真を「ただ見る」:
- 選んだ写真を、まずは何も考えずに眺めます。
- 写っているもの(人、場所、物、天気など)を客観的に描写してみましょう。ジャーナルに箇条書きで書き出すのも良い方法です。「写っているのは私と友人。背景は公園のベンチ。晴れた日。私たちは笑っている。」のように、事実だけを記述します。
- 湧き上がる感情や身体感覚に気づく:
- 写真を見ていると、どのような感情が湧いてくるでしょうか?(嬉しい、悲しい、懐かしい、寂しい、戸惑い、心地よい、違和感など)
- 体にはどのような感覚がありますか?(胸が温かい、お腹がざわつく、肩が重い、呼吸が浅くなるなど)
- これらの感情や感覚に、良い悪いといった判断を加えず、「ただ、ある」ものとして気づきます。
- もし複数の感情や感覚がある場合は、それらを全て観察してみてください。複雑な感情の層が見えてくるかもしれません。
- 感情を表現する(ジャーナリングなど):
- 気づいた感情や身体感覚を、ジャーナルに書き出してみましょう。「この写真を見ると、胸のあたりが温かくなって、少し泣きたくなるような懐かしい気持ちがする」「あの時の楽しかった感じが蘇ってくるけれど、同時に今はもう戻れない場所だと感じて少し寂しい」など、正直な気持ちを言葉にします。
- 言葉にするのが難しければ、湧き上がる感情を色で表現したり、簡単な絵や図形で表現したりするのも良い方法です。
- 少し探求してみる(無理なく):
- なぜ、この写真を見るとこの感情が湧くのだろう?と、自分自身に優しく問いかけてみます。
- 写真のどの部分が特に感情を揺り動かすのか?
- それはいつの写真か?当時の状況は?
- 現在の自分の状況とどう関係があるか?
- 過去の経験と現在の自分が、この写真を通してどのように繋がっているかを感じてみます。ただし、深入りしすぎて圧倒されそうな場合は、このステップを飛ばしても構いません。安全が最優先です。
- 感情を受け入れる、または安全な方法で手放す:
- 湧き上がった感情に気づき、表現できた自分を認めます。「この感情に気づけたんだな」と、客観的に受け止める感覚を持ちます。
- もし解放したい感情であれば、その感情が安全な形で(例えば、光になって消えていく、風に吹き飛ばされる、川に流れていくなどのイメージで)自分の中から出ていく様子を思い描くのも一つの方法です。これは、感情を否定するのではなく、そのエネルギーを安全に循環させるためのイメージワークです。
- 感情と共にしばらく静かに座って、その感覚を味わうだけでも十分なワークになります。
ワークの実践上の注意点
- 安全第一: 最も重要なのは、ご自身の安全です。もしワーク中に圧倒されるような強い感情や辛い感覚が出てきたら、すぐに中断し、深呼吸をしたり、安全だと感じる場所に移動したり、信頼できる人に連絡したりしてください。無理に感情を掘り起こす必要はありません。
- 判断しない: 湧き上がる感情や感覚、そして過去の自分自身に対して、良い悪い、正しい間違いといった判断を下さないようにしましょう。ただ観察し、気づくことに焦点を当てます。
- 小さな一歩から: 最初は1枚の写真から始め、短い時間で行うのが良いでしょう。慣れてきたら、枚数を増やしたり、時間を長くしたり、より深く探求したりすることもできます。
- 秘密を守る: ジャーナルに書いた内容は、誰かに見せる必要はありません。自分自身の内側を探求するためのプライベートな記録です。
継続するためのヒント
- 定期的に行う: 例えば週に一度など、ワークをする時間を意図的に設けることで、感情との付き合い方が少しずつ変化していくことに気づけるかもしれません。
- 他のワークと組み合わせる: 写真ワークで見つけた感情を、エモーショナル・ライティングや描画など、他の表現ワークと組み合わせることで、より多角的な探求が可能になります。
- 多様な写真を使う: 過去の写真だけでなく、現在の日常の写真を撮ってみる、インスピレーションを感じるアート写真を見る、旅行の写真など、様々な種類の写真を使うことで、感情の多様な側面に気づくことができます。
まとめ
写真を用いた感情探求ワークは、視覚的な刺激を入口として、言葉になりにくい感情や、過去と結びついた感情に安全に触れるための有効な方法です。このワークを通して、写真が単なる思い出の記録ではなく、自己理解を深めるための扉となり得ることを体験していただければ幸いです。ご自身のペースで、安全に、好奇心を持って、感情の世界を探求してみてください。