わたし解放ジャーナル

安全な音楽を使った感情探求ワーク:選曲や演奏で感情と向き合う

Tags: 感情, 音楽, ワーク, 自己理解, 表現

感情と音楽の深いつながり:安全な探求の扉を開く

私たちの感情は、しばしば言葉だけでは捉えきれない複雑さを持っています。内省やマインドフルネスの実践を通して自己理解を深めようとする中で、特に深い感情やネガティブと感じやすい感情にどのように向き合い、安全に表現すれば良いか、戸惑うことがあるかもしれません。

このような言葉にならない感情の探求や表現において、音楽は古来より強力なツールとして用いられてきました。音楽は論理を超えて直接感情に働きかけ、私たちの内面にアクセスする手助けとなります。しかし、ただ音楽を聴くだけではなく、意図的に音楽と関わることで、より意識的に感情と向き合い、安全な形で表現することが可能になります。

この記事では、音楽を安全な方法で感情表現・探求に活用するための具体的なワークをご紹介します。選曲や簡単な楽器を使った音出しを通して、言葉にならない感情にアクセスし、自己理解を深めるための一歩を踏み出しましょう。

なぜ音楽が感情探求に有効なのか

音楽が私たちの感情に強く影響を与えることは、多くの人が経験的に知っています。楽しい音楽を聴けば気分が高揚し、悲しい音楽を聴けば共感的に心が沈むことがあります。この現象は、単なる心理的なものではなく、脳科学的な側面からも説明されています。音楽は脳の感情に関わる領域(扁桃体など)や報酬系に直接作用し、情動的な反応を引き起こすことが研究で示されています。

また、音楽には構造やリズムがありながらも、意味が固定されていない抽象的な性質があります。この抽象性が、言葉にするのが難しい曖昧な感情や、抑圧されている感情を表現したり、気づきを与えたりするのに役立ちます。特定の音や旋律が、過去の記憶や感情を呼び起こすトリガーとなることもあります。

音楽を使ったワークは、こうした音楽の特性を意図的に活用し、普段アクセスしにくい感情の層を探求し、言葉にできない感情を安全に「表現」する手段を提供します。それは、感情を分析したり評価したりするのではなく、ただ「感じる」こと、そして「表現してみる」ことを促すプロセスです。

ワーク1:選曲による感情探求

このワークは、今あなたが感じている感情や、探求したい特定の感情に寄り添う音楽を選び、それを聴くことで内面の変化を観察・記録するものです。特別な技術は必要ありません。

ワークの手順

  1. 準備:
    • 一人になれる、リラックスできる静かな環境を確保します。
    • 音楽を再生できるデバイスと、筆記用具やジャーナル、あるいはメモ帳を用意します。
    • 心を開き、好奇心を持って臨む姿勢を整えます。
  2. 感情への意識:
    • 目を閉じるか、一点を見つめ、ゆっくりと呼吸を整えます。
    • 今、自分の内側にある感情に意識を向けます。漠然とした感覚でも構いません。「少し落ち着かない」「何となく満たされない感じ」「特に何も感じない」など、正直に感じ取れることをそのまま受け止めます。あるいは、特定の探求したい感情(例: 不安、喜び、疲れ)があれば、それに焦点を当てます。
  3. 選曲:
    • ステップ2で意識した感情に「合う」と感じる音楽を探します。あるいは、「今の自分が聴きたい」と感じる音楽でも構いません。特定のジャンルやアーティストにこだわる必要はありません。クラシック、ジャズ、ロック、アンビエント、環境音など、どのような音楽でも良いのです。
    • もし感情に合う音楽が見つからない場合は、直感的に惹かれる音楽を選んでみてください。
  4. 傾聴と観察:
    • 選んだ音楽を、他の作業をせず、ただ聴くことに集中します。
    • 音楽を聴きながら、自分の心や身体にどのような変化が起こるかを観察します。
      • 身体のどこかに感覚の変化はありますか?(例: 胸がざわつく、肩の力が抜ける、胃が締め付けられる)
      • どのようなイメージが心に浮かびますか?(風景、色、抽象的な形など)
      • どのような思考が巡りますか?
      • 感情の質や強さはどのように変化しますか?
    • これらの観察を、評価や判断を加えずに、ただありのままに受け止めます。
  5. 記録(ジャーナリング):
    • 音楽を聴き終えた後、観察したことを簡単に記録します。
    • 選んだ曲名やアーティスト名も記しておくと、後で見返したときに役立ちます。
    • 「〇〇という曲を聴いて、胸のあたりが少し苦しくなった」「この曲を聴くと、子供の頃の夏休みを思い出した」「特に何も感じなかったが、ただ音が心地よかった」など、素直な感想や気づきを書き留めます。
    • 言葉にしにくい場合は、キーワードや簡単な図、色などで表現しても構いません。

ワークの応用

ワーク2:簡単な楽器を使ったサウンド表現

このワークは、言葉にならない感情を、音として「表現してみる」試みです。音楽的な知識や技術は一切必要ありません。ただ、感情を音に乗せるイメージで自由に音を出します。

ワークの手順

  1. 準備:
    • 周囲を気にせず、音が出せる安全な場所を確保します。(自宅の一室など)
    • 簡単な楽器を用意します。プロ仕様である必要はありません。
      • リズム楽器(マラカス、シェイカー、タンバリン、手拍子や足踏みでも良い)
      • 単音が出せる楽器(キーボードの一音、リコーダー、簡単な打楽器、おもちゃの楽器)
      • あなたの「声」(ハミング、ため息、叫び声など)
      • 身近にある物で音が出るもの(ペットボトルに豆を入れたもの、鍋やフライパンを叩く、紙を破る音など)
    • 評価される心配のない、プライベートな空間で行うことが重要です。
  2. 感情への意識:
    • ワーク1と同様に、今感じている感情や探求したい感情に意識を向けます。
  3. サウンドによる表現:
    • 意識した感情を、持っている楽器や声、身近な物を使って「音」として表現してみます。
    • 音程、リズム、ハーモニーといった音楽的な要素は全く気にする必要はありません。
    • 静かで小さな音、激しく大きな音、不連続な音、持続する音など、感情が求めるままに音を出してみてください。
    • 例えば、怒りを感じているなら、強く叩いたり、大きな音を出したりするかもしれません。悲しみなら、長く低い音を出したり、か細い声を出したりするかもしれません。喜びなら、軽快なリズムを刻むかもしれません。
    • 「この感情はどんな音だろう?」「この感情を音にするとしたら?」という問いかけを自分にしながら音を出してみるのも良い方法です。
  4. 観察:
    • 音を出しながら、自分の内側に起こる変化を観察します。
    • 音を出すことで感情はどのように変化しますか?
    • 身体のどこかに変化はありますか?
    • 表現できたと感じる音はありましたか?
    • この段階でも、評価や判断は加えません。ただ、音を出すことと内側の変化を感じ取ることに集中します。
  5. 記録(任意):
    • もし可能であれば、音を出した後の気づきや感想を簡単に記録します。
    • 「この音を出したら、少し胸が楽になった」「最初はうまく音にできなかったが、何度か試すうちに感情が乗ってきたように感じた」「思ったより大きな音が出て自分でも驚いた」など、感じたことを書き留めます。
    • 音そのものを録音しておくことも、後で振り返るのに役立つ場合があります。

ワークの応用

ワーク実践上の注意点

これらの音楽を使った感情探求・表現ワークは、安全に自己と向き合うためのものです。以下の点に注意して取り組んでください。

まとめ

音楽を使った感情探求・表現ワークは、言葉にできない感情にアクセスし、安全な形で自己を表現するための有効なツールです。選曲を通して感情を観察するワークや、簡単な楽器で感情を音にするワークを通して、普段気づかない内側の声に耳を傾けることができます。

これらのワークは、あなたの感情とより深くつながり、自己理解を深めるための一歩となるでしょう。評価や判断を離れ、好奇心を持って音や音楽との対話を楽しんでみてください。感情と安全に向き合う旅は、音楽という新たな仲間を得て、さらに豊かになるはずです。